不貞行為とは?肉体関係がない場合でも慰謝料が発生するケース

不倫慰謝料を請求するためには、「不貞行為」があったと認められなければなりません。

もっとも、肉体関係イコール不貞行為ではありません!

  • 恋愛関係にはあったけど手をつないだだけ
  • キスはしたけど肉体関係はなかった
  • ホテルには行ったが最後まではしていない

このような反論があり争いになることはよくあります。

そこで法律上どのような要件を満たせば慰謝料が認められるのか弁護士が解説します。

目次

前提:不倫の慰謝料請求の根拠は不法行為

不倫慰謝料を請求できる根拠は、不倫が不法行為にあたるためです(民法709条・710条)。

その成立要件は以下のとおり。

  1. 不貞行為をしたこと
  2. 損害(精神的苦痛)を負ったこと
  3. 不貞行為と損害に因果関係があること
  4. 故意・過失があること

とくに①不貞行為、④故意・過失がよく争いになるポイントです。

この記事では①不貞行為といえるための条件について詳しく紹介します。

不貞行為にあたる例とあたらない例の具体例

裁判例での不貞行為の定義

不貞行為とは、「配偶者が貞操を守らないこと」と言われています(東京地裁平成28年11月30日)。

これをわかりやすい言葉に直すと「配偶者以外の人間と肉体関係を持つこと(性行為をすること)」です。

肉体関係は類似の行為も含むとされているので、性行為前の行為(口ですること)も不貞行為にあたると考えられています。

プラトニックな交際は不貞行為か?

不貞行為となるためには肉体的な関係が必要です。

なので、恋愛関係にあったとしても肉体的な接触がなければ不貞行為にはあたりません。

キスや体を触る行為自体は不貞行為か?

それでは、キスや服の上から触る行為など、肉体関係がない男女の交際は不貞行為になるのでしょうか?

同じような行為をしていても、不貞行為にあたるとした裁判例と否定した裁判例も存在します。そうすると裁判官次第ということになってしまうことにもなりそうです。

そこで実務上は行為をした場所や態様などから、性行為に近いと言えるほどの行為であれば、不貞行為となると考えられています。

認めた裁判例(宇都宮地裁令和元年9月18日)

不倫相手の家に数日滞在していたという事案で、「性行為は不貞行為の不可欠の要素ではなく…キスやペッティング(挿入を除いた行為)をしたことだけでも不貞行為にあたることは明らか」として不貞行為の成立を認めました。

否定した裁判例(東京地裁平成28年12月28日)

二人で食事をした後に、駅前の路上で抱き合ってキスをしたという事案で「不貞行為に該当すると認めることはできない」として否定しました。この程度では不貞行為にはあたらないと裁判所は判断したのです。

この違いは何でしょうか?

紹介した裁判例を見ると、肯定したものは家まで泊まっている一方で、否定したものは外でデートしていたにすぎません。

外でデートしていた事例では人の目があるので、それ以上の行為をすることはできません。しかし、家の中で何をしていたのかは外からは見えないので、「キス以上の性行為に準じるような行為もあったのではないか?」という考え方が背景にあったのでしょう。

結論としては、「性行為に準じる行為」とまでいえることまでしていれば不貞行為にあたることになります。

不貞行為を否定する際に注意すること

しかし、上記の行為しかないから不貞行為はしていないと主張する場合、注意しなければならないことがあります。それは、2人で会っていた行為などから、「不貞行為が推認される」として不貞行為が認められる場合があることです。

不貞行為が推認される例

以下のようなたくさんの事情の合わせ技で不貞行為が認められることも。

  • LINEで恋人関係のようなやりとりをしていた
  • 頻繁に二人で会っていた
  • 二人で外泊をしていた形跡がある
  • 「気持ちよかった」「したい」などのLINEのやりとり
  • 人前で手をつないだりキスをしていた

そのため不貞行為を否定するときには、単に肉体関係がなかったことだけではなく、推認することはできない理由も含めて主張する必要があります。

このように高度な法律判断が必要なので、自分で否定してしまう前にお近くの弁護士までご相談されることをオススメします。

目次